日本ヒューレット・パッカード代表取締役社長 樋口泰行氏による著書である。
氏の松下電器就職からMBA留学、BCG、Appleコンピュータの転職を経て現職に至るまでの様々な体験や選択、その時々の氏の思いや考えが克明に記されている。
この本を読んでいる間ずっと感じ続けていたことがある。樋口氏の仕事に対する考え方と僕の考え方が非常に似ているのだ。技術系で現場経験者という点が共通だからだろうか。
これまで多くのビジネス書を読み感銘を受けることも度々あったが、どちらかというと自分にはない部分に学ぶことが多かった気がする。自分と同じ考え方を持ち、資質が高く、結果を残した人。そう言う意味では自分のロールモデルになりうる人物である。
樋口氏の説かれる仕事観を列挙しておきたい。
・”心意気”といった精神面を重要視しているところ。
・自分より一段上の視点に立って仕事をしようという心がけ。
・若いうちからポジションと関係なく、「これは自分の会社だ。それを経営しているのは自分だ」という経営者意識を持つ気構え。
・あらゆるビジンネスパーソンにおいて現場重視の姿勢。現場の生情報により意志決定の精度は増し、他者への説得力も増す。
・勝負所で周囲の賛同を得るためには、それまでに実績を積み上げておくことが必須。実績もなく「勝負、勝負!」と叫んでもオオカミ少年に過ぎない。
・強い使命感を持ってことにあたる。
・自分の仕事や方向性の位置づけを体系的に把握するために常にスコープを意識する点。そしてそのスコープを広げようとする意識づけ。
・価値観の異なる人とあえて交わり対人関係の幅を広げること。
なお、そのための基本原則として3つを挙げてあった。
1.自分の伝えたいことを熱意と誠意を持ってきちんと伝えること。
2.相手の気持ちや状況を理解し尊重すること。
3.そのうえで遠慮をしないこと。(ビジネスの関係では不必要に遠慮せず言うべきことを言うこと)
・悩みが生じた時はその原因を一つ高い視点に立って考え、悩みの構造を整理しながら解決に向かうこと。
・身近な助言者を見つける。自分より広い、あるいは異なるスコープを持つ人の意見を聞くことにより良い解決策を見つけることが出来ることがある。特に自分より資質の高い助言者を見つけること。
・スピード感を高めること。迅速な行動と意志決定が成長の鍵。そしてスピードを高めるためには、仮説指向、現場指向、予測能力、そして前向きな姿勢が必要であるということ。将来の変化やエラーを恐れるばかりではいけない。トライ&エラーを繰り返し能力を磨いていくことも重要である。
これら、ビジネスマンとして必要となる資質を数多く列挙された上で本書の最後で、それでもやはり重要なことは
『「マインド」こそがすべて』
であると樋口氏は語っている。
合理主義も大切だがそれは最適化の手段であって目的にはならない。
目的を持ちその意味を追求する姿勢、それこそが「マインド」であると僕も考える。