ちょっと固いタイトルだが、ある友人カップルが先日僕の誕生日にプレゼントしてくれた本の題名である。
初版は1984年だから僕がまだ小学生のころ出版された本である。
著者は広中平祐氏。1970年、39歳で数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を幾何学の分野で受賞された方である。フィールズ賞とはあまり聞き慣れない賞かもしれないが、映画「グッド・ウィル・ハンティング」や、ドラマ「やまとなでしこ」なんかで登場した賞である。
文末の解説は国際的なクラシック指揮者である小澤征爾が友人として執筆している。
冒頭、「この著書で、私は私自身の人生を語ろうと思う」
その言葉通りこの本では広中氏の半生が自らの口で語られており、「創造」をテーマに、夢とは、知恵とは、師とは、友とは、もつべき精神とは、姿勢とは、、、様々なサブテーマがちりばめられている。
以前、青年社長について書いた時に、僕はノンフィクションが好きだと書いた。尊敬できる人間の生い立ちや半生を知ることで、自分の人生の歩み方や価値観に何らかのヒントや糧、あるいはインスピレーションを得ることが出来るからである。「人に学ぶ」という意味では歴史も好きだが、現実的な刺激という意味ではやはり現代の人間に注目する。本来ならば現実の世界で自分の身近にいて欲しい「尊敬すべき人」が見あたらないため、こうした本にそれを求めようと考えているのかもしれない。
さて、読み終えたばかりだが広中氏の言葉から私の心に残った言葉をいくつか書き留めておきたい。
○「創造のある人生こそ最高の人生である」
広中氏の価値観を濃縮した一言がこれだ。
僕も同じようなことを考える。
消費の人生と創造の人生。即物的ですぐ腹を満たせるのは消費だが、真に心を満たせるのは創造にあると僕も思う。
消費は自分一人の幸せにすぎないが、創造は大小あれど自分以外の人のためになるからだ。
創造には苦しみを伴う。しかし苦しみがあるからこそ手にしたものは本物なのだ。
○私は、そのような時こそ人間に深くものを考える力、深い思考力が要求されると思う。立ち直る見通しがまるでつかない、どこから手をつけて解決すればいいのか検討がつかない、そのような大問題を抱え込んだ時、頼りとなるのは自己の思考力であり、それ以外にはないと思うのだ。。。実は私たちが勉強する目的の一つは、この思考力をつちかうことにあるのだ。
将来もし子供ができて「なぜ勉強しないといけないの?」と聞かれたらこのように答えたい。
僕たちの年齢になってくると忘れることも早くなりがちだ。それを理由に学ぶことをあきらめる人も多い。しかし、広中氏は忘れること自体は肯定している。一度学んだことは思い出すのが早くなるので忘れてもよいと。それ以上に思考力が培われることを是としている。
○嫉妬は、ものを創造しようとする人間にはまことに好ましくない感情である。。。ではどうするか。ここで、あきらめることが必要になってくるのである。。。そのような時、私は、かの男の子の名言を声に出して唱えるのである。「ぼく、アホやし」と。すると、頭がすっと楽になる。
「ぼく、アホやし」のくだりは、そういう考え方いいなぁと思った。
フィールズ賞受賞者という秀才ですら(他人の才能への)嫉妬のような俗な意識を持つことがあるのか。
スパッと気持ちを切り替えて、自分のフィールドで才能を発揮する方が確かに創造的なのだ。
○「素心深考」
広中氏がサインする時に添える言葉。
素朴な心と深い考え、この言葉、僕ももっておきたい。
これに「即決実行」と実行力の下句を加えれば完璧だと思う。(※考と行で韻)
○「順境また好し、逆境また好し」。。。世の中で成功した人は、たいてい、逆境を自分の人生にプラスに取り込んでいく能力を備えているように私には見える。
成功ウンヌンは置いておいて、逆境を楽しめる楽天性と実力を身につけることができれば、生きる楽しみの幅は広がることだろう。
「本は考えるきっかけを与えてくれる」と広中氏は述べている。
良い本を送ってくれた二人に感謝。
コメント (2)
著者の広中氏はあまり一般人には知られていないけど、数学界では超有名な方ですね。
あとがきが音楽界で超有名な小澤さんというのも、すごいですね。やはり超一流の人というのは分野を問わずつながっているのだなぁ、と実感します。
本は私も読みましたが、非常に普遍的な示唆に富んでいて、働き方、生き方に役立てたい内容でした。広中氏のような天才であってもいろんな壁にぶちあたる、という点は新鮮で、遠い人ではなくて、自分の中に取り入れていけそうに思いました。
しかし、壁にぶち当たるたびにじっくりと原因や対処法を考えて次につなげていく、という姿勢が凡才と天才を分ける点ではないかと思いました。
投稿者: kayaker | 2007年03月18日 21:22
日時: 2007年03月18日 21:22
>kayakerさん
広中さんの言われる学びによる「思考力」を活かして、自分も一つ一つ壁を乗り越えていきたいものです。
投稿者: tetsu | 2007年03月19日 00:38
日時: 2007年03月19日 00:38